栽培醸造蔵とは、農業から醸造まで一貫して行う酒蔵のこと。日本酒を農業副産物として捉え、“酒造りは米作りから”という信念のもと、海老名市内をはじめとした近隣地区で、酒米の栽培から醸造までを自分たちで行っています。
1995年に「食管法」が廃止。それまでは農家が栽培した米は全て農協が買い取り、その後酒造組合を経由して蔵へ販売されるという流れでしたが、この規制が緩和されることでお米の流通が自由化されました。当時人気だった漫画「夏子の酒」に感銘を受けた6代目橋場友一氏は、もともと家が食用米を作っていたこともあり、「自分たちで作ったお米でお酒を造れるのでは」と思い立ち、酒米の自社栽培を始めました。
地元の農家さんと協力し酒米の栽培・研究を進め、1999年に一番最初の地元産山田錦で造った日本酒が商品化されたのが「いづみ橋 恵 青ラベル」。2000年には「酒造りは米作りから」をモットーにドメーヌ宣言。「酒米研究会」を立ち上げ、契約農家4名をはじめ神奈川県農業技術センター、JAさがみ、水利組合、海老名市役所農政課と協力し、2000年当初は0.2haだった栽培面積は、現在38haまで増えました。
2006年に精米機を導入し、2009年には社内に栽培醸造部を立ち上げたことで、「夏は農業・冬は酒造り」という今の泉橋酒造のかたちができあがってきました。同じ土地で同じ種類の米作りを行い続けると、田んぼの状態が安定してくると橋場氏は言います。その酒米に合った土壌ができあがり、また酒造りのときも米の状態を把握しているため安定して高いクオリティのお酒が造れるそうです。自社栽培面積は0.5haから8haまで拡大し、現在は、契約栽培と自社栽培を合わせて原料米の90%を地元で栽培。楽風舞、山田錦、神力の3つの酒造好適米を育てています。
田んぼには自然の生き物がたくさん生息しています。そこに飛び交うとんぼを殺すような農業は行うべきではないと、減農薬や無農薬の安心・安全な農業に取り組んでいる表現として、会社のロゴにとんぼのマークを採用しています。
農薬を使う本来の理由は、米の育成を阻害する雑草や害虫を抑えるためです。無農薬栽培で一番大変なのが雑草の除去。手作業や、チェーンの付いた農具、中高除草機を使って除草します。夏場の炎天下で除草というのは非常に大変な作業ですが、これを怠るといい米は作れません。また、無農薬栽培の田んぼには、害虫もいますが、その害虫を駆除してくれる他の生き物も生息しています。生き物の力を借り、自然のサイクルを利用することで、自然と共生しながら、環境に優しい酒造りを行っているのです。