醸造家キムの日記
~ライスワインができるまで~
東京・中野にある「ZERO LABO」では
ビールをはじめワインやどぶろくなど、
様々な「醸造」にチャレンジしています。
通常の見学では見ることができないような
お酒ができるまでのストーリーを
お伝えしようと思います!
今回は『ライスワイン』。…お米で造ったワイン!?
ライスワインとは
お米から造られた、蒸留していない醸造酒のこと。つまり、日本酒の英語訳なのですが、今では日本酒やSAKEという言葉が浸透しているので、ライスワインという言葉自体はあまり使われていません。
今回はどぶろく(もろみを漉していない状態)を造ったのですが、どぶろくというと、米感が強くて飲みにくいような印象を受ける方も多いと思いました。このどぶろくは、しっかり冷やしてワイングラスで飲んでも美味しい、ワインのような感覚のどぶろくに仕上げたので、お米で造ったお酒の新ジャンルとして「ライスワイン」と称しています。
【洗米】米を洗います。
「酒造好適米」と洗い方について
一般米と酒造好適米の違い
日本酒造りに向いているとされる「酒造好適米」は、普段私たちが食べているお米とどう違うのでしょうか?
食卓に出てくるお米は“もちもち”していて“小粒”ですよね。酒造好適米は、このような普通のお米とは少し違った特徴を持っています。
有名なのは『山田錦』でしょうか。海外でも人気の銘柄・獺祭をはじめ、多くの酒蔵さんが日本酒造りに使用しています。
では、どの点が日本酒造りに適しているのでしょうか?
①米粒が大きくて割れにくい
②タンパク質や脂質が少ない
③心白がある
これらが私たちが日常食べているお米と違うところですね。酒米は食べると固めであまり美味しくないとの噂です。
②ですが、「精米」という工程によって取り除かれます。日本酒のラベルを見ると“精米歩合▲▲%”と書かれていますが、どれくらい米を磨いたかを数値で表したものになります。
洗い方
精米された米は磨かれた状態なので、もろくなっています。
なので、米が割れないように水の中で優しくかき混ぜる洗い方が一般的です。決して、ギュッギュッと研ぐようなことはしません。
洗米時間
下の写真、奥にタイマーが見えますか?実は『秒単位』で時間を管理しながら米を洗っているんです。
酒蔵さんでは、一日に何十キロ~何百キロと洗米しなければならず、蔵によってはほぼ手作業で行うところもあります。
全量同じ吸収率に合わせるために、徹底的に時間を管理する必要があるんです。
【浸漬】お米に水を吸わせます。
普通のお米は美味しく炊くコツに吸水時間が関係しますよね、酒米も同じです。
透明な生米が水を吸って色が白く変わっていきます。
この、米に水を吸わせる作業を「浸漬(しんせき)」といい、色の具合で吸水率を判断する事ができます。
では「浸漬」が不十分だとどうなるのでしょうか?
それについて、醸造家であるキム兄さんに聞いてみました!
平良)キム兄、この“浸漬”をあまりやらないとどうなるの?
キム)米の吸水が不十分な場合は、麹の酵素による糖化作用が受けにくくなります。米をアルコールにするにはこの糖化がとても重要になるので、かなり神経を使う作業の一つです。
浸漬終了
今回は12分くらいやりました。浸漬作業は洗米の時点から時間を計ります。 しっかり吸水が出来ると白くまん丸な可愛い粒が出来上がります。
次は蒸しの作業が始まります。
ここで前回の『浸漬(しんせき)』の工程がしっかりできているかがわかります。 さてさて、 どうやってわかるのでしょうか・・・?
【蒸米(じょうまい)】米を蒸す。
蒸し上がりの温度は100度以上。
1時間じっくり時間をかけて蒸します。
平良)キムキム、お米を蒸す理由ってなんですか?
キム)お米のデンプン質をいったん糊化(α化)するためです。
普通の米も蒸したら甘みがでますよね?これがα化。
こうしないと、酵素がだす消化酵素の影響が受けられず、お酒になりません。
【放冷】熱々っ!米を冷ます。
大きな台に熱々の米を広げ、巨大扇風機で風を当ててちょうどいい温度まで冷まします。
蒸米は基本的には室温までしか下がりません。
平良)なんでお米を冷ますの?そのままの方が発酵が速く進みそうなのに・・・。
キム)熱い状態の蒸し米を入れると醪(もろみ)の温度が高くなり、発酵が必要以上に進んでしまいます。
もう一つ、必要以上に米が溶けてしまいます。
蒸し上がりの硬さを確認する
酒蔵によっては、蒸し米の『捻り餅』を作って硬さを確認するときもあります。
平良)今回はどうですか?みそうなのに・・・。
キム)ナカナカ良いですね!
【醪(もろみ)】ここに適温に戻した酒米を入れます。
醪(もろみ)とは、発酵中の液体のことです。
酒母(しゅぼ)・麹(こうじ)・蒸米(むしまい)・仕込み水をいれて造った、
日本酒になる前段階のものです。
これから麹の酵素が大いに働きます。
酵素がデンプンを糖に変える→糖を酵母が食べて『アルコール』と『二酸化炭素』を出す
これを繰り返す事により、『お酒』ができてきます。
【櫂入れ】
タンク内をかき回し、酵母の活動を促す
醪(もろみ)温度の均一化、酵母の活性化等の目的で行われています。
平良)毎日混ぜるんですか?
キム)そうですね。基本は朝と夕方で2回行いますが、醪(もろみ)の状態を見てやらない時もあります。元気がない(発酵のポコポコする泡が出てこない)と心配で眠れません。自分の子供のようで可愛くて仕方がありませんね。いま仕上げの調整をしていますが、早く皆さんに飲んでいただきたいです。
毎日分析して度数と状態をチェック
とっても大事な作業。
日々分析して体調(発酵具合)をチェックする事により、どれくらいの期間発酵させるかを決めます。
そして、いよいよリリース・・・!
酵母たちは今日も元気です。
米の旨味を感じながら自然発泡のしゅわしゅわがたまらない!
ライスワインの出来上がり
これは初めての飲み心地!
口に含むとまず感じるのは米の柔らかな甘み。
そして軽めな泡が口の中を優しく包み込む・・・!
濾してないから米の存在感もあり、
何だか身体がじんわり喜ぶ味わいに仕上がりました。
今季はすでに売り切れましたが、
次回にぜひご期待ください!