将棋と山寺で知られた町、山形県天童市に水戸部酒造はあります。
1898年(明治31年)に初代水戸部弥作によって創業。100年以上の歴史をもつ、山寺を源とする立谷川(たちやがわ)の伏流水と地場産米で、当蔵のお酒は、全て純米造りです。
原料本来の米の旨みを十分に表現するために、2010年、日本酒造りでは一般的に添加される醸造用アルコールの使用を廃止しました。
仕込み水は、奥羽山系の伏流水。 蔵の上流にある名刹「山寺」(やまでら)を源流とするミネラルを多く含んだ天然水で、硬度は約120です。
日本の天然水の平均がおよそ硬度50ですから、全国の蔵元の中でも有数の、かなり硬い部類の水ということになります。 これにより「銘刀の切れ味」と表現される、シャープで硬質なフィニッシュを特徴とするお酒が生み出されます。
個人的にも「山形正宗」という日本酒は好きで、よく飲んでおりましたが、蔵元に会う事はできませんでした。
初めて水戸部蔵元と会えたのは、池袋で開催された「日本酒マニアック博」でした。そこで、なんとガチャピンの着ぐるみを着てセミナーをされていました。
そんな愛すべき水戸部蔵元ですが、お酒造りはいたって真面目でこだわりを持っています。今回、直接蔵を訪問することにより、その事がビシビシと伝わってきました。
水戸部蔵元が蔵に戻って17年。今では800石になっており、特約店向けにお酒を醸してます。その特約店数は60と、極々わずかです。 もととなるお米にもこだわっており、農業法人を立ち上げて地元を盛り上げていらっしゃいます。今は10ヘクタール(30%分)を自前のお米で醸しているそうですが、将来は80%まで増やして行きたいという目標を聞かせてくださいました。
もちろん、こだわりはお酒造りにおいても同様です。「ぬけがけ法」という、酒米を薄く盛る方法。これによって、肌感覚で蒸しが良くなったとおっしゃっていました。また、搾りも朝・昼・晩で試してみて、その味の違いを比べてみたりと、新しいことにチャレンジされています。生酛も挑戦9年目に入ったが、まだまだ分かっていないことが多いと、遠い目をされていました。
45歳の蔵元。まだまだ挑戦の毎日だそうですが、なんと、日本酒の枠をとび越えて、生ハムの輸入販売もされています。生ハム・・・。日本酒と全く関係ないように思えるのですが、水戸部蔵元が醸す「純米吟醸まろら」とよく合うんです!